香りがダイエットを左右する?食欲コントロールのための香り活用法

人間は、五感の中でも特に視覚と聴覚に頼って生活しているといわれています。その一方で、香りを感じ取る嗅覚は、人間の体にさまざまな影響をもたらす重要な感覚であることはあまり知られていません。例えば、焼きたてのパンの香りが食欲を掻き立てることもありますし、特定のにおいが古い記憶を呼び起こすこともあります。
最近では、香りがメンタルにも影響を与えることが注目され、ストレスケアや食欲コントロールにも活用されるようになっています。
今回は、「香りで食欲をリセットする」という新しいアプローチを、科学的な視点も交えながらご紹介します。
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香りが脳に届くメカニズム

ストレスが溜まっているときに好きな香りを嗅ぐだけで気持ちが落ち着いたり、集中したいときに爽やかな香りを嗅ぐと、スッと頭が冴えるように感じたりするのです。
私たちが感じ取る香りは、鼻の奥にある嗅上皮(きゅうじょうひ)でキャッチされ、脳にある嗅球へと伝わります。
嗅覚以外の他の感覚がまず理性的な判断を担う「大脳新皮質」を経由するのに対し、嗅覚は一部が感情や記憶に関わる「大脳辺縁系」にも比較的近い経路で届くとされています。
この仕組みが、香りを嗅ぐと気分が変わったり、昔の記憶がふと蘇ったりする理由のひとつと考えられています。
つまり、香りは「理屈より先に心に届く」感覚といっても差し支えはないでしょう。
だからこそ、ストレスが溜まっているときに好きな香りを嗅ぐだけで気持ちが落ち着いたり、集中したいときに爽やかな香りを嗅ぐと、スッと頭が冴えるように感じたりするのです。
最近の研究では、このような嗅覚刺激が自律神経やホルモン分泌にも影響を及ぼす可能性が指摘されています。
香りそのものが直接的に脂肪を燃やすわけではありませんが、ストレスや気分の変化を介して「食欲の感じ方」に変化をもたらすことがあるのです。
食欲を落ち着かせる香り・高める香り

柑橘類のすっきりした香りを嗅ぐと気持ちが切り替わり、「食べたい気持ちをもう少しがまんしてみようかな」と自然に思えることでしょう。
香りは、気分だけでなく食欲にも影響を与える可能性があります。「食べたい」と感じるのは単にお腹が空いているからではなく、嗅覚やホルモン、感情が複雑に関わっているからです。たとえば、グレープフルーツやベルガモットなどの柑橘系の香りは、気分をリフレッシュさせ、交感神経を刺激する傾向があるといわれています。
いくつかの研究では、グレープフルーツ精油を吸入したときに交感神経活動が高まり、体脂肪分解に関わるノルアドレナリンの分泌が促される可能性が示されています(※香料や個人差により結果は異なります)。柑橘類のすっきりした香りを嗅ぐと気持ちが切り替わり、「食べたい気持ちをもう少しがまんしてみようかな」と自然に思えることでしょう。
一方で、バニラやシナモンなどの甘い香りは、安心感や満足感をもたらし、ストレスによる過食欲求を落ち着かせるサポートになるといわれています。甘いものを食べなくても、似た香りで心が満たされるという効果を感じる人も少なくありません。実際、バニラの香りを嗅ぐことで「甘いものが食べたい」という衝動が和らぐ傾向があったとする報告もあります。反対に、焼きたてのパンやカレーなど「食べ物自体の香り」は食欲を刺激する作用が強く、ダイエット中には要注意です。嗅覚は、視覚以上に食べたい気持ちを左右する力を持っているのです。
香りとストレスホルモンの関係
「ストレス過食」というワードがあるように、ストレスはダイエットを邪魔する存在です。
ストレスを感じたとき、私たちの体内ではコルチゾールというホルモンが分泌されます。コルチゾールは本来、体をストレスから守るために必要なホルモンですが、慢性的に分泌が増えると、食欲増進や脂肪の蓄積にもつながることがあります。実はこのときにも、香りがサポートになる可能性があるのです。
たとえば、ラベンダーやベルガモット、ゼラニウムの香りは、ストレス緩和や自律神経のバランス調整に関する研究が多く、アロマテラピーでもリラックス効果のある精油としてよく知られています。
疲れた日や、気持ちが落ち着かないときにこうした香りを取り入れることで、ストレスによる「食べすぎの連鎖」をゆるやかに断ち切る手助けになるかもしれません。
香りを習慣化して食のリズムを整える

食後に温かいカモミールティーを飲むのも良いでしょう。リラックスした状態は消化にもプラスに働きます。
香りの力を日常的に活かすには、シーンに合わせて使い分けるのがコツです。ポイントは「食べる前・食べた後・朝のリセット」の3つのタイミング。
① 食前に香りで冷静さのスイッチを入れる
食事の前にグレープフルーツやペパーミントの香りを嗅ぐと、気持ちが切り替わり「本当にお腹が空いているのか」を意識しやすくなります。必要以上に食べてしまうことを防ぐための、心のスイッチと心得ましょう。
② 食後にリラックス系の香りで満足感アップ
デザート代わりに、バニラやカモミールなど穏やかな香りを取り入れると、食後の幸福感が高まり、もう少し食べたい気持ちを落ち着かせることができます。食後に温かいカモミールティーを飲むのも良いでしょう。リラックスした状態は消化にもプラスに働きます。
③ 朝の香りリセットでリズムを整える
朝にレモンやユーカリなどのシャープな香りを嗅ぐと、眠気がリセットされ、1日のリズムが整いやすくなります。香りでスイッチをオンにするイメージです。こうした香り習慣は、続けるほど自律神経やホルモンのリズムを整える助けになり、結果的に食と心のバランスを保ちやすくなることでしょう。
香りの力はサポート役
ここで大切なのは、香りで体脂肪が減るといった過度な期待をしないことです。香りそのものが代謝を大きく上げたり、食欲を完全にコントロールしたりということではなく、香りをきっかけに自分の行動が変わるという心理的・生理的効果を活用しましょう。気分を落ち着かせたり、ストレスを和らげたりすることで、自然と食べ方や食べる量に良い変化が生まれることもあるのです。
ダイエットの成功には、無理をせず自分に合った方法で続けることが欠かせません。香りはそのサポート役として、毎日の生活に寄り添ってくれる存在です。
食べたい欲求をがまんしてストレスを感じるのではなく、香りで気持ちを満たすといった新しい習慣で、心と体のバランスを整えてみてはいかがでしょうか。
関連記事
日本脳科学関連学会連合 https://www.brainscience-union.jp/trivia/trivia3308
NIH https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22612017/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/8646568/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10928328/
今回のまとめ
香りは、理屈ではなく心に働きかける感覚です。
香りを取り入れることで、気分転換やストレス緩和につながり、結果的に食べすぎや間食を防ぐサポートになります。
香りそのものに直接的な代謝効果はありませんが、心のバランスを整えることで、自然と食との付き合い方も変わっていくもの。
香りを上手に活かした、心地よいリセット習慣を取り入れてみましょう。
































