極端なダイエット法は寿命に影響を与えるという研究結果
世の中には実に多くのダイエット法があります。運動やエクササイズなどによる正攻法から、特定の食品ばかりを食べたり食事制限で極端に量を減らしたりといった危険な方法までさまざまです。栄養バランスの良い食事が健康に大きく関わっていることは世界の常識となっていますが、バランスを欠いた食事制限を続けた場合、どのような影響があるのでしょうか。その研究結果が発表されました。
【contents】
- 極端なダイエットは健康に悪い?
- トライすべきでないダイエット法
- ①特定の食品ばかりを食べるダイエット
- ②グリーンスムージー、ジュースクレンズダイエット
- ③糖質制限(炭水化物抜き)ダイエット
- ④油抜きダイエット
極端なダイエットは健康に悪い?
極端な食事制限をするダイエットは世界中で行われているようです。
特定の栄養素を控えめしたり、あるいはゼロにしたりといったものです。実際に健康上のメリットがあるのでしょうか?
名古屋大学大学院医学系研究科・予防医学分野の田村高志博士らのチームが炭水化物と脂肪の摂取量と死亡率との長期的な関連を調べました。発表した研究結果では、炭水化物と脂質の摂取量を極端に減らしたり増やしたりすることは、長期的には寿命に影響を与える可能性があることを報告しました。
米国栄養学会が発行する『ジャーナル・オブ・ニュートリション』に掲載された研究結果は8万人以上を対象に、毎日の食事による炭水化物、脂肪、総エネルギー摂取量をおよそ9年にわたって追跡調査した結果から得たデータを分析し、全死因死亡率とがん関連死亡率が高くなることが判明しました。
研究者チームによると、追跡期間を5年未満とした場合、特に女性は炭水化物の摂取が少ない(1日の総エネルギー摂取量のうち、炭水化物から摂取するカロリーが50%未満)の場合、循環器疾患による死亡リスクが上昇していたといいます。
ですが追跡期間が5年以上の場合では、炭水化物の摂取量が多い(同65%以上)の女性は、全死亡リスク、がん死亡リスクがどちらも高まっていました。
そのほか、不飽和脂肪(主に植物性脂肪)の摂取量が少ない女性は、全死亡リスクとがん死亡リスクが上昇していたとのこと。
研究チームはこれらの結果について、男性と女性の両方とも、ある食品グループを極端に減らすことは健康に影響を及ぼしていることを示唆し、主任研究員の田村隆博士は「低炭水化物と低脂肪の食事が重要であることを示しているため、この研究は非常に重要である」と述べています。短期的な利益が長期的なリスクを上回る可能性があるため、長寿のための最も健全な戦略ではない可能性があるとのことです。
糖質制限ダイエット(ケトジェニックダイエット、ケトンダイエット)などの極端なダイエット法の台頭に加え、低炭水化物の食事や低脂肪の乳製品への注目が高まっていることから見ても、特定の食品グループの摂取を制限することはこれまで以上に人気を集めています。
しかしこの新たな研究結果は、バランスの取れた食事を取ることに注意を払い、極端な偏りを避け、さまざまな食品と主要栄養素からエネルギーを摂取する必要があることを示唆しています。
トライすべきでないダイエット法
バランスの良い食事を適量食べることが健康に寄与することが研究により示唆されました。ですが栄養バランスを欠いたおすすめできないダイエット法は、これまでに何度も流行しています。短期的に体重を落とすことができたとしても、健康を損なう可能性があるダイエットはトライすべきでないと考えましょう。どのようなダイエット法がアウトなのかを解説します。
① 特定の食品ばかりを食べるダイエット法
古くはりんごダイエットやバナナダイエット、最近ではオートミールダイエットなど、特定の食品ばかりを食べるダイエット法があります。ダイエットに効果のある成分が含まれているということで話題になっては消えていくのがこの方法ですが、いくつかの問題点があります。同じ食品ばかりを食べ続けることにより栄養が偏ること、そしてその食材に飽きてしまうなど長続きせず、すぐにリバウンドしてしまうことです。元の食事に戻せば体重もすぐに元通りになってしまうため、続けられないダイエット法は致命的といえます。
②グリーンスムージー、ジュースクレンズダイエット
セレブが取り入れるオシャレなダイエット法として一時期流行した、グリーンスムージーやコールドプレスジュースを使ったジュースクレンズダイエット。フレッシュな野菜やフルーツをミキサーでジュースにし食事代わりに飲むというもので、食物酵素や食物繊維、ビタミン、ミネラルなどを摂取することができるとされています。ファスティング用のドリンクとして使われることもあります。
水分が多いので満腹感はそれなりに得られますが、食事をこれらに代えることにより、体に必要なタンパク質、糖質、脂肪の3大栄養素が圧倒的に不足します。野菜やフルーツの可食部すべてをジュースにしたものならともかく、搾りかすが残るタイプのジューサーで作れば食物繊維を摂取することができません。体重が減ったとしても一時的なものに過ぎませんし、秋冬の時期だと体を冷やしてしまうというデメリットも。
グリーンスムージーやコールドプレスジュースを食事に置き換える方法は、ダイエットのためというより暴飲暴食が続いた後日に内臓を休める目的で飲むのなら良いかもしれません。
③糖質制限(炭水化物抜き)ダイエット
糖質の多いお米、パン、麺類、スイーツなどを断つ、または量を減らすだけの簡単な方法なので、チャレンジする人が多い、糖質制限(炭水化物抜き)ダイエット。糖質の摂取量を制限して血糖値を上げないようにし、体脂肪がエネルギーとして使用されることでやせるとされています。
糖質をオフすると、体内にチャージされている予備電源のような存在であるグリコーゲンがエネルギーとして使われます。その際、グリコーゲンと結びついている水分も体外へ排出されるためその分の体重が減りますが、あくまでも水分が減っただけで実際にはやせたわけではないのです。糖質オフを始めてすぐに体重が減るのはこのため。
また、主食である穀類を食べないと食物繊維の摂取量が減り、腸内環境の悪化に繋がる可能性があります。糖質オフダイエットでは、穀類は適量を食べ、スイーツなど砂糖の摂取量を減らすのが正しい方法です。
④油抜きダイエット
揚げ物、マヨネーズ、バターや生クリームたっぷりのケーキなど、ダイエット中はご法度というイメージがあり、もちろんダイエット中はこれらの食品はなるべく控えたほうが良いです。
しかし油は太るからといって一切摂らないと、髪がパサパサになったり、肌にツヤがなくなったりしてしまいます。脂肪も体には必要な栄養素なのです。
脂肪と一言でいっても種類はさまざまで、体にどう影響するかも異なります。控えるべきは、現代人が摂取過多だと言われる肉類やバターなど乳脂肪に含まれる飽和脂肪酸です。酸化しにくい特徴を持ち常温では固形のものが多いです。摂り過ぎると悪玉コレステロールが増え、動脈硬化や心筋梗塞などの生活習慣病のリスクが高まると言われています。反対に積極的に摂取を心がけたいのが、魚やエゴマ油などに含まれるDHA・EPA、αリノレン酸などオメガ3脂肪酸です。オメガ3脂肪酸は不飽和脂肪酸に分類され、常温では液体であることが多く、光や空気、熱によって酸化しやすい性質を持ちます。血液サラサラ効果があり、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らす作用があることで知られています。
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Science direct
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0022316623721986?via%3Dihub
今回のまとめ
バランスの良い食事を適量摂り、有酸素運動と無酸素運動の両方を取り入れる王道のダイエット法は、少しハードルが高いと感じるかもしれませんが、一生スリムで健康でいるには有効な手段です。
食べるものに注意を払うことや運動をすることは、自分の体を大事にすることにつながります。