食品のヘルシー度が一目瞭然!ラベル表示を行うシンガポールの取り組み
世界各国では、国民の健康を守るために様々な取り組みが進められています。特に食品業界では、消費者がより健康的な選択をしやすくするために、食品パッケージへのラベル制度や表示基準が導入されつつあります。これらの取り組みは食品の栄養成分をマークなどで分かりやすく可視化することで、日々の食生活においてより健康的な選択をすることを促進しています。
例えばシンガポールでは、食品パッケージに健康レベルを示すシンボルやグレードが表示され、消費者にとってわかりやすい情報が提供されています。これにより生活習慣病の予防や、肥満の増加を抑制する効果が期待されています。どのような表示があり、どのような役割を果たしているのでしょうか?今回はシンガポールの取り組みをご紹介します。
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シンガポールの健康ラベル制度
シンガポールは健康促進に向けた革新的な取り組みとして、食品のラベル制度「Healthier Choice Symbol (HCS)」と「NUTRI-GRADE」を導入しています。これらの制度は、消費者が健康に配慮した食品や飲料を選ぶ際の指標となっており、特に肥満や糖尿病のリスクを軽減するために役立っています。これらのラベル制度は消費者に食生活を見直すきっかけを提供し、国全体の健康をサポートするための重要な施策です。
どのようなラベルなのかを見てみましょう。
●Healthier Choice Symbol (HCS)
Healthier Choice Symbol (HCS)は、シンガポール保健促進庁 (HPB) によって運営されているラベリング制度です。
HCSのマークは特定の栄養基準を満たす食品に与えられ、消費者がより健康的な選択をしやすくするためのツールとして機能します。HCSは低脂肪・低糖・低塩といった健康的な基準を満たす食品に付与され、消費者がパッケージを一目見ただけでその食品が健康に配慮されているかどうかを判断できる仕組みになっています。通常の製品に比べてカロリーが低く、栄養バランスが良いことが保証されています。このマークを通じて、消費者は健康的な選択をより簡単に行えるため、シンガポール全体の健康状態向上に貢献しています。
●NUTRI-GRADE
NUTRI-GRADEは、シンガポールが健康促進の一環として導入した新しいラベル制度で、特に飲料を対象としています。
糖分やカロリーの含有量によってA〜Dまでの評価が付けられて商品パッケージに表示され、Aは最も健康的な選択肢、Dは最も不健康な選択肢として区別されます。このシステムは、糖分の多い飲料の過剰摂取が肥満や糖尿病の主要な原因であるという認識に基づいて、国民の飲料に対する健康意識を向上させることを目的としています。
NUTRI-GRADEの評価がラベルに表示されることで、消費者は糖分やカロリー摂取量を減らすための指標となります。特にジュースやソフトドリンクなど、普段から多くの消費者に親しまれている飲料において、NUTRI-GRADEは健康的な選択をするために重要な役割を果たしています。
健康ラベル導入の社会的背景
シンガポールでは肥満や糖尿病が大きな問題となっています。特に糖尿病有病率は先進国の中でもアメリカに次いで高い水準にあります。政府はこの問題に対応するため様々な健康促進策を導入していますが、その中でも特に注目されたのがNUTRI-GRADEです。糖分の過剰摂取が国民の健康に悪影響を及ぼしていることが明らかになり、これを解決するために視覚的にわかりやすいラベル制度が求められたのです。
糖分の摂取量を減らし糖尿病をはじめとるす生活習慣病のリスクを低減するために、NUTRI-GRADEの導入は重要な施策として位置付けられました。
日本における健康ラベル制度
日本でも「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」といったラベル制度があることは広く知られています。これらのマークは食品が健康効果を有していることを示すものではありますが、糖分やカロリーに基づいて評価されるNUTRI-GRADEのようなシステムはまだ導入されていません。
日本のトクホマークは、主に特定の健康効果を目的とした商品に付与されるものであり、消費者がより健康的な製品を選びやすくする役割を果たしています。消費者が高機能な商品を選びやすい環境は整っているものの、糖分や脂肪分にフォーカスしたヘルシーさを表示するラベル制度はまだ導入されていない状況です。特定の健康効果を表示するだけでなく、ヘルシーレベルを一目で識別できるような取り組みが日本でも今後導入されれば、社会全体の健康意識が高まるのではないでしょうか。
関連記事
Health promotion board https://www.hpb.gov.sg/food-beverage/healthier-choice-symbol
農林水産省 https://www.maff.go.jp/j/syokuiku/evidence/attach/pdf/gaikoku-3.pdf
今回のまとめ
シンガポールでのHCSやNUTRI-GRADEは、分かりやすいラベルによってヘルシーな選択を誰もが簡単にできるものです。
日本でもトクホなどのラベル制度はあるものの、特定の効果に絞った表示だけでなく、より広い範囲に渡る表示制度の導入が検討されるべきかもしれません。
シンガポールのように、政府と業界が協力して健康的な食生活を推進する取り組みは、日本においても今後ますます重要になるのではないでしょうか。